はじめに|医師の経費と事業所得を理解する重要性
「経費ってどこまで認められるのだろう?」
「医師バイトや開業医の売上は、どう税金が計算されるのか?」
医師として働く中で、収入が高くなるほど税金の重さを感じる場面が増えてきます。
その中でも特に重要なのが、事業所得と経費の考え方です。
経費を正しく理解し、適切に計上することで、所得税や住民税の負担を軽減することができます。
本記事では、勤務医と開業医それぞれの立場に合わせた経費と事業所得の基本を、わかりやすく解説します。
事業所得とは?|経費と密接に関係する所得区分
まずは事業所得について理解しましょう。
事業所得とは、「自己の責任と計算において行う事業から得られる所得」のことです。
医師の場合、主に以下のケースが該当します。
- 開業医としての診療報酬
- 医師バイトやスポット勤務などの業務委託による報酬(給与所得でない場合)
- セミナー講演料や執筆料などの副業収入
これらの収入から必要経費を差し引いた金額が、課税対象となる事業所得になります。
医師にとっての必要経費とは?|勤務医と開業医で異なる考え方
勤務医の場合
原則として、勤務医の給与所得は必要経費を個別に差し引くことができません。
その代わりに、給与所得控除が自動的に適用され、経費的な扱いを受けています。
ただし、次のような場合は雑所得等として経費計上の余地があります。
- 医師バイト(業務委託契約)で得た報酬 → 必要経費を差し引ける
- セミナーや学会に関する出費 → 所得区分に応じて経費計上の可能性あり
開業医の場合
開業医は「事業所得」として収入を得ているため、必要経費を幅広く計上することが可能です。
経費として認められる主なものは以下のとおりです。
- 医療機器や備品の購入費用
- スタッフの人件費
- 事務所・クリニックの家賃や光熱費
- 医療材料費
- 学会参加費・専門書籍代
- 事業用自動車の維持費(按分が必要)
これらは、業務に直接関係する支出であれば基本的に経費として認められます。
経費に関する注意点と見落としがちなポイント
経費は「何でもかんでも認められるわけではない」点に注意が必要です。
特に、以下のようなケースは税務調査などで否認されるリスクがあるため、慎重に判断しましょう。
- プライベートとの区別が曖昧な支出(旅行費、衣類、食事代など)
- 家賃や通信費など事業と私用が混在するもの → 按分計算が必要
- 医師国保や国民年金などの社会保険料 → 経費ではなく「所得控除」
また、医療法人化している場合、個人事業ではないため、法人の経費として処理されます。
法人と個人の支出をしっかり分けることが重要です。
まとめ|経費と事業所得の正しい理解が節税への第一歩
経費と事業所得の関係を理解することは、医師にとって節税を実現する上で欠かせない知識です。
勤務医は原則として給与所得控除のみですが、副業収入などでは経費を適切に差し引くことで税負担を軽減できます。
一方、開業医や医療法人役員は、事業経費の管理が税務上の大きなポイントとなります。
経費の考え方や事業所得の扱い方に不安がある場合は、専門家に相談して正しい処理方法を確認しましょう。
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次回予告|開業医・勤務医別|所得税対策のベストプラクティス
次回は、「開業医・勤務医別|所得税対策のベストプラクティス」をお届けします。
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